夜の川辺に優しい明かりが呼吸するさまは、なんとも言えないくらいはかないものです。
蛍雪の功や火垂るの墓など、はるか昔から現代まで文化の中に色を放ってきました。
そんなホタルは、なぜ光を放つのでしょう?
その光にはいったいどんな意味があるのでしょう?
光が消えた後はどうなるのでしょうか?
■簡単に説明すると(目次)
進化論から捉えるホタル
生物学者のサラ・ルイスによると、ホタルは自然淘汰や生存競争、そして性的な生殖競争によって光を放つようになったと言います。ホタルの生物学的分類
ホタルは甲虫類に所属。カブトムシやテントウムシ、カミキリムシやゲンゴロウと同じなんですね。
ホタルの誕生
ホタルは1.5億年ほど前に誕生しました。原始のホタルは光を放つことがなかったそうで、昼間に活動していたそうです。
その頃はオスが触覚を使ってメスの匂いを嗅ぎつけていました。
ホタルが光る仕組み

ホタルはルシフェラーゼという酵素を持っていて、これとルシフェリンという物質、そして酸素が加わることで光を放ちます。
ホタルのような生物の発光は、熱を出さないということで注目されています。
ホタルの光は不味い
ホタルはなぜ光るのかについて調べる時、”光らないホタル”について考える必要があります。ホタルには光るものと光らない種類があるのですが、いずれも幼虫の時には光を発するというのです。
実は、ホタルは幼虫の期間が2年に及ぶほど長いので、いかに捕食者から食べられないかが生き残るために肝心です。
ホタルが持っている光る化学物質はひどい味がするのですが、光は毒物を持っているぞと捕食者を威嚇する役割として進化したと考えられています。
ホタルの光は愛のメッセージ
私たちがホタルに抱いているロマンティックなイメージ、光は求愛行動のため。蛍の光が実際に求愛行動としての機能を帯びてきたのは数百万年を要したと言います。
ホタルの成虫は命が短いので、オスたちはメスを惹き付けるためにこぞって光を発しているのです。
ホタルの光、返歌するメス
ホタルの求愛行動はオスが主導で、オスの光に対してメスが光ることでカップルが成立するそうです。私たち人間は男性が草食化していると言いますが、ホタルは今も昔も男性主導だそうです。
ホタルのモテ男
モテるオスはとってもシンプルです。メスが好んだオスは、光が長持ちするホタルでした。
男性のあなた、ドキッとしませんか(笑)?
LEDライトを使った実験で明らかになったそうです。
ホタルのメスがモテ男に惹かれるわけ

交尾の最中、オスは栄養も一緒にメスに注入するそうです。
その栄養とはたんぱく質の一種なのですが、オスがもつたんぱく質の量を発光の時間から見定めているのです。
オスの発光時間が長いほど、多くの卵を産むことができると明らかになっています。
魔性の女 吸血ホタル
ロマンティックな文脈から語られることの多いホタルですが、残虐な種類のホタルがあります。進化の過程で毒素を失ったこの種類は、他の種類のオスホタルを食べてしまうのです。
オスから化学物質を取り込むためだと言われていますが、その方法が残酷。
他の種類のメスのふりをして標的のオスの求愛行動に返答し、
そのオスが鼻の下を伸ばして近づいてきたところをパクリ!
なんとも恐ろしいホタルです……。
ホタルを脅かす問題

原因は、森林の減少と私たちが放つ光です。
私たちの都市開発が彼らの住まいを奪っていくだけではなく、夜には電気の明かりがホタルのロマンスを邪魔します。
サラ・ルイスは、ホタルの風流さも私たちの子供たちには過去の遺物となってしまうかもしれないと警鐘してスピーチを終えました。