ライト兄弟が潤沢な資金をもつ他の団体を差し置いて有人動力飛行を実現できたのはなぜ?
マーティン・ルーサー・キング牧師がアフリカ系公民権運動の象徴となったのはどうしてでしょうか。
モチベーションや組織のコンサルタントを専門にするサイモン・シネック氏は、彼らのような優れたリーダー・組織の共通点を定式化しました。
その名もゴールデン・サークル。
優れたリーダーや組織はメッセージを伝えるのが上手
サイモン・シネックは、人々をひきつける偉大な指導者や組織に共通点があるといいます。優れたリーダーは考え、行動し、人々に伝える方法が同じであって、ダメなリーダーとは正反対なのだそうです。
その方法を図示しました。
ゴールデン・サークル理論

普通の組織やリーダーは、サークルの外側から内側に向けて働きかけますが、優秀なリーダーは内側から外側に向けてはたらきかけることが明らかにされました。
ゴールデン・サークルの三要素
①何を
自分たちがしていることや物事がなんであるか②どのように
他の集団と自分のグループの違いなどのセールスポイント③なぜ
何のために?何を信じるのか?私たちが存在する理由は?といった信念のようなもの
このなぜを理解して周りに発しているリーダーや組織はとてもすくないというのです。
ダメなリーダーや組織の発するメッセージ
私たちの多くは、何があってそれは他とはどう違っていて、どんなにか素晴らしいかを訴えることで、相手の行動を期待しています。例えば、このサイトの紹介について考えてみましょう。
”TEDobてどぶ!” はTEDプレゼンテーションをまとめています。
スピーチの内容を書くだけではなくて、あなたがイメージできるような具体例を織り交ぜています。日常生活がちょっぴり豊かになりますよ!
(さあ、みなさん見てください(涙)!)
いかがでしょうか、心を動かされましたか?
こんなサイトには誰も興味を持てないですよね?
それでは、良い例についてみていきましょう
アップルは”なぜ”を訴えている

アップルの商品はシンプルで洗練されたデザインで感覚的な操作が可能ですから、世界中の人から支持されています。
しかしアップルは、
「デザインが優れていて操作が簡単です。他のデバイスとも同期できます!便利でしょ?さあみなさん、欲しいでしょ?」
だなんてメッセージは発しません。
アップルの伝え方はこうです。
「我々は世界を変えるという信念のもとに開発しています。独創的な発想に価値があると考えていて、私たちが世界を変える手段というのは美しく簡単に使えて親しみやすい製品です。ご覧のとおり、素晴らしいものができました」
このように、情報の順番が逆なのです。
“なぜ”をスタートにして”何を”に導くメッセージを発しています。
人は”なぜ”に動かされるとサイモン・シネックは解説しています。
優れたリーダーが信念で人々を動かし、成果をあげた例を続けてみていきましょう!
ライト兄弟の有人飛行成功の陰で

ライト兄弟はオハイオ州の自転車店を営みながら飛行機に情熱を燃やしていました。
彼らのうち誰一人として大学を卒業した者はいませんでした。
しかし同じころに有人飛行に挑戦していたサミュエル・ピエールポント・ラングレーのことはあまり知られていません。
彼はハーバード大学に所属し、5億近くの資金を与えれられて飛行機を開発していました。
潤沢な資金で優秀なエンジニアを集め、ニューヨークタイムズも彼に注目していました。
有人飛行に成功したのはどちらでしょう?
ライト兄弟です。
ライト兄弟が米軍とハーバードを打ち負かした理由
どうして潤沢な資金と高い知識を備えながら、サミュエルは成功しなかったのでしょう。それは、ライト兄弟が飛行に成功した後、サミュエルは開発をやめたことがヒントです。
彼には情熱がなかったのです。
サミュエルの目的は富と名誉でした。
そのため、サミュエルのチームはただ給与のために働いていました。
対して、ライト兄弟は夢を追いかけていました。
二人の夢を信じた仲間は情熱をもってライト兄弟に応えたのです。
キング牧師の話を聞くために聴衆が集まったのではない

人種差別に対抗したキング牧師ですが、なぜ多くの人々が彼に心を動かされたのでしょう。
TwitterもYOUTUBEもない時代に、25万人ものひとがなぜ彼の演説に傾聴したのでしょうか?
キング牧師はひどい仕打ちを受けていたから?
キング牧師はスピーチが上手かったから?
いいえ、違います。
キング牧師は信念を語った
キング牧師には優れた才能もありませんでした。他の運動家と比較したとき、キング牧師だけが偉大だということはありませんでした。
キング牧師は、信じることを語ったのです。
人種差別についてではなく、夢をです。
神が作る法と人が作る法が同じになることを、アメリカが平等であることを信じていると語ったのです。
人々はキング牧師が信じることを信じ、それを信じた人が自分の夢としてさらに他の人を惹きつけました。
サイモン・シネックは、キング牧師の演説を聴いていた人々は、自分の信念のために、信じるアメリカのために話を聞いていたのだと解説しました。
私たちが「なぜ」に動かされるわけ
これまで優秀なリーダーは”なぜ”を説くことで人々を動かすという例を示してきました。サイモン・シネックが提唱するゴールデン・サークル理論には、ちゃんと生物学的な根拠があるといいます。
ゴールデン・サークルの秘密は脳の器質にある

そしてそれぞれがゴールデン・サークルの「なぜ」「どのように」「何を」に対応しているというのです。
大脳新皮質
脳の中で、現代の私たち人間が発達させた新しい部位は大脳新皮質です。これは「何を」のレベルにある情報を処理することに長けています。
大脳新皮質は合理的な思考や言葉を司っているからです。
大脳辺縁系
大脳新皮質よりもさらに内側にある部位が大脳辺縁系です。これはまさに「どのように」「なぜ」に対応しています。
大脳辺縁系は感情、信頼、そして私たちの行動を司っています。
意思決定をするところですが、言語能力はありません。
つまり、動物的で原始的なところなんですね。
なぜを刺激することが大切

複雑な情報を処理できても、”なぜ”に結び付きにくいといいます。
つまり、行動につながらないのです。
しかし、信念、直感的な行動というものは、後からいくらでも理由づけできてしまいます。
そのため、”なぜ”から始まる内から外へ向かうメッセージに私たちは動かされるというのです。
まとめ
・私たちの脳は、感情や行動を司る部位が優位
・人を説得するときは、「なぜ」「どのように」「何を」の順で
映画「キングスマン」からハリー・ハートの名セリフを。
“Manner’s maketh Man”(マナーが作るんだ、人を……)