動機付けの科学

ご褒美があると私たちは働かないのだ、と。
あなたはいったい、何のために勉強してますか?何のために働いているのですか?
ご褒美のために取り組んでいるのなら、作業効率を下げているだけかもしれませんよ。
やる気を出したいあなた、創造性に悩むあなたに必見の記事です。
ダニエル・ピンク
ダニエル・ピンクは異色の経歴の持ち主です。作家・漫画家で学生時代はエール大学ロースクールにて法学博士号を取得。
1995年から2年間アル・ゴア米副大統領のスピーチライターを務め、さらには日本の漫画研究のため日本に滞在していました。
そんな彼が、やる気についての科学的な研究を紹介したのですが、これが興味深い。
ご褒美によるやる気向上は、全く意味のないものなのでしょうか?
私たちは高いパフォーマンスを発揮するためにはどうしたらいいのでしょうか?
ご褒美があると課題の成績が下がる ロウソク問題

与えられた道具だけでロウソクを壁にくっつけるという課題です。
すると、課題を解く時間の速さの成績が良かったらご褒美にお金をあげると言われた人たちは、なにも褒賞のない人たちと比べてはるかに成績が悪かったのです。
ご褒美の存在が、課題への取り組みを悪くしたのでしょうか?
ロウソク問題についてはこちら
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ご褒美があったら課題の成績が上がる ロウソク問題
ご褒美の扱いには注意が必要です。先ほど、成績が良ければご褒美をあげるという条件では、課題を解く時間が遅くなったとわかりました。
しかし、グラックスバーグの追加の実験では条件を少し変えてみました。
成績に関わらずお礼のお金を渡すと伝えた条件の場合は、何もない条件の人たちより成果がはるかに良かったのです。
ロウソク問題から分かるご褒美と成績
ここまで、ご褒美の有無が私たちの取り組みの成果に与える影響について分かったことは以下の通りです。ロウソク実験では以下の3つのグループについて検討されました。
グループA「成績が良ければ、ご褒美としてお金をあげるよ」
グループB「取り組みの時間を測るよ」
グループC「取り組み終わったらご褒美としてお金をあげるよ」
その結果、AとBで成績を比べた時によかったのはご褒美のないBでした。
そして、AとCの場合では、成績に関わらず褒賞を約束されていたCがはるかによい成績を収めました。
こうした状況は、実験に限ったことではないといいます。
事実、経済学者が成果主義を採用している企業の51社の事例を調べたところ、金銭的なインセンティブがパフォーマンスを低下させうるという結果がでています。
これは、いったいどういったことなのか見ていきましょう。
If-Then式のご褒美がオススメのシチュエーション

つまり、もし成績が良かったらご褒美があるよという状況は、単純作業の場合に適しています。
例えば、たくさんの荷物を運ぶだとか、書類の仕分け……専ら自動化できる内容などです。
このようにはっきりとしたルールがあって、一つのゴールに向かって集中するような状況では有効です。
しかし、裏を返せば先ほどのロウソク問題のような広い視野で物を判断する柔軟性を求められる場合には、私たちの可能性を狭めてしまいます。
私たちはどういいた仕事を求められているのでしょうか?
複雑な課題に柔軟な思考とアイディアをもって取り組む仕事です。
「Ifもし~ならばThen」の方式でご褒美を用意することは控えたほうがいいでしょう。
私たちが高い成果を発揮するためには、違った形の動機づけが必要だということです。
作業効率と成果を高めるためのモチベーション
私たちが効率よく作業をこなして良い結果を出すために採用すべきシステムは、成果報酬型ではないのです。
内的な動機付けによるアプローチです。
ご褒美というものは、外から与えられるものなので外的動機付けといいます。
対して内的動機付けとは、自分の中に見出すものです。
主に3つあります。
作業効率を上げる3つの内的動機付け
自主性、成長、目的の3つです①自主性
自分の行動は自分で決めたいという欲です。②成長
上達をしたい、もっと高みに到達したいという向上心です。③目的
あなた自身より大きなレベル、社会のために取り組みたいという意義です。これら3つが内的動機です。
内側から生まれる、あるいは内側に持つ動機が創造性を高めるために最適なのです。
ビジネスの成功には内的動機付けがある
内的動機付けが創造性を要するタスクのパフォーマンスを高めることは分かりました。では、実際の企業がこのモチベーションシステムを使って、どうのように成功したのでしょうか?
Wikipediaの褒賞 Microsoftは内的動機付けに打ち負かされた

Encartaというのですがご存じでしょうか?
Microsoft社は千人単位のプロにお金を払って、その記事の作成をお願いしました。
優秀な役員がこのビジネスを統括し、予算と納期をキッチリ管理して進めていました。
それから遅れて2001年、ジンボ・ウェールズという人物があるプロジェクトを開始しました。
趣味で作る百科事典です。
編集者にお給料は1円たりとも払われることはありません。
そのサービスの名はWikipedia、勝者は明白です。
Googleのお仕事 20%の自由
Google社では、エンジニアは仕事時間の2割を好きなことに使っていいと決められています。時間、タスク、チーム、テクノロジー、すべてを好きなように使っていいのです。
GmailをはじめとするGoogleサービスの多くは、すべてその20%の自由時間から生まれたものです。
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まとめ
・ご褒美が有効なのは単純作業だけ
・想像・創造的な作業や複雑な課題には、内発的な動機が有効!
・内発的な動機とは、自主性・成長・目的という要素