つり革片手にうつむいています?
横になってスマホとにらめっこでしょうか?
自分の姿勢を意識することってあまりないのではないでしょうか?
自分の普段の姿が写真に撮られた時やふいに鏡に映った時くらいでしょうか。
自分の姿勢について意識をするべきだと語るのは、ハーバード大学の社会心理学教授エイミー・カディ氏です。
姿勢は相手に与える印象と自身の行動の両方に大きな影響をもつのだといいます。
姿勢が人生を変えるのです。
姿勢はコミュニケーション
笑顔、ガッツポーズ、ウインクといった身体の動きは、ボディランゲージという非言語のコミュニケーションの一種です。コミュニケーションの情報量のうち55%を占めます。
私たちは言葉に限らずとも、お互いの感情を表現して読み取ることができます。
ボディランゲージの効果に関する実験
では、私たちがどれほど見た目から相手を判断しているかについて測った実験を紹介します。名医の条件 (タフツ大学ナリニ・アンバディ)
アンバディ氏の研究では、実験参加者に医者と患者の実際の問診の様子を撮影したビデオを見せました。そのビデオは映像のみで音声がありません。
医者の下した診断や発言内容は分からない映像です。
その結果、参加者は30秒の無音ビデオをみただけで医者が患者に訴えられるかどうかの予想ができることが分かりました。
医者の能力ではなく、感じの良さや患者への接し方が患者に対してよい影響を持つことがわかったのです。
選挙は顔だ (プリンストン大学アレックス・トドロフ)
トドロフ氏は、人の顔の提示時間について操作して印象について調べました。その結果、私たちは初対面の人物を10分の1秒見ただけで相手が良い人かどうか、どういった印象かという評価を下していることがわかりました。
また、アメリカの議員選挙の結果は、候補者の顔を1秒だけ見た時の私たちの判断で予想できることが分かりました。
その精度はなんと70%!たった1秒でですよ!
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非言語行動は他者に印象を与える
ボディランゲージ、非言語行動が他者に影響を与えることが十分わかりました。しかしエイミー・カディ教授は、自分自身も非言語行動に影響を受けることを忘れてはいけないのだと言います。
私たちの考えや体の反応も、自分の非言語行動の影響を受けているというのです。
力と支配から捉える身体の動き
動物が威嚇するときに、特定の姿勢になることは想像しやすいでしょう。熊は後ろ足で立ちあがり、エリマキトカゲはエリマキを広げ、鳥は羽を広げる。
動物たちは身体を広げて自分を大きく見せようとします。
人間も同じように自分を大きく見せようという行動がみられます。
椅子に深く腰掛けて足を広げている人や、いわゆるヤンキーの歩き方のように肩で風を切る人は誰でも見たことがあると思います。
これらの姿勢は、自分に力を持った人がとっているという面と、自分に力を感じている瞬間にとっていることが考えられます。
こうした表現は昔から私たちの間に存在し、先天的であるということが分かっています。
心の状態を身体が表す
ジェシカ・トレーシーは、ガッツポーズのような誇らしさの表現について研究しました。ゲームで勝った時、かけっこで勝ったとき、ゴールテープを一番に切った時に、よく両手を空に突き上げるポーズがありますね。
研究の結果、このポーズは生まれつき盲目の人もとることが分かりました。
また、無力感を抱いたときに身体が縮こまり身体を丸くすることも生まれつき備えた姿勢でありました。
心の状態が身体に現れていることが分かります。
身体の状態が心に影響を及ぼすのか
心の状態が姿勢に現れることは分かりました。それでは反対に身体の状態が心に影響を与えることはできるのでしょうか。
元気なフリをしていることによって元気になる。
優秀な人物を演じることによって優秀になる。
そういったことが可能なのでしょうか。
笑顔とサルの研究から見ていきましょう。
身体が心を作る 楽しいは作れる

反対に、笑顔だから楽しい気持ちになるということが分かっています。
割り箸を口にはさんで強引に笑顔と同じ顔の状態にすると、私たちは同じ条件でも楽しい気分であると感じるのです。
パワーについても同様に、力強く大きな振る舞いをすることによって、自信を持てることが分かっています。
身体が心に影響を与えるのです。
役割が心を作る 偉いから偉いのだ、すごいからではない
群れで暮らすサル。ボスを筆頭に序列があることは知られています。
もちろん、一番強いのがボスザルだと考えるでしょう。
これは半分あっていますが、半分違っています。
サルの群れで、一匹のサルが急きょボスの役割を引き継ぐことになっとき、そのサルの中では変化が起こります。
数日の間に力を司るホルモンが上昇し、ストレスホルモンが減少します。
役割の変化が心に作用するのです。
ボスザルだから強いのだ、強いからボスザルなのではない
有能な人と無力な人の違い:テストステロンとコルチゾール
有能な人と無力な人の違いについては、先ほどのボスザルのようにホルモンの違いがあることが分かっています。テストステロン
テストステロンは支配性のホルモンです。男性ホルモンの一種で社会的地位に関する意識が高まります。
コルチゾール
コルチゾールはストレスホルモンです。ストレスを感じた時に多く分泌されることが分かっています。
ホルモンの違い
有能なリーダーを調べたところ、テストステロンが多く、コルチゾールが少ないことが分かりました。ボスザルと同じだったのです。
対して、無力な人はテストステロンが少なく、コルチゾールが多いことが分かりました。
力強くストレスに強い人物がリーダーになりえます。
ボスザルの研究では立場がホルモン分泌を変えることが分かりましたが、それと同様のことを簡単に行えないものでしょうか?
姿勢を変えることによって心を変えることはできないのでしょうか?
姿勢の実験
そこでカディ教授は実験を行いました。実験参加者に力強さを感じているときに出るとされるハイパワーポーズか、無力な時に現れるローパワーポーズを2分間取ってもらったあと、唾液を採取してホルモン値を調べました。
ハイパワーポーズとは

手足はリラックスして広がっています。
ローパワーポーズとは

手足が縮こまり身体も丸まっています。
スマートフォンを操作したり、本を読んでいるときは、自然とこの形になっています。
力強いポーズで支配性ホルモンが増えた
実験の結果、ハイパワーポーズをした人は、その前と比べてテストステロンが20%上昇しました。反対に、ローパワーポーズをした人は10%減少しました。
力強いポーズでストレスが減少
ハイパワーポーズをした人は、コルチゾールが25%減少し、ローパワーポーズをした人は15%増加していました。身体は心に影響する

非言語行動は、他者に与える印象の違いだけではなく、自分自身がどう感じてどういう存在であるかを定めていたというわけです。
行動が結果に影響を及ぼす
身体が心に影響することは分かりました。その効果はあるのでしょうか。
カディ教授は、面接実験を行いました。
参加者にハイパワーポーズかローパワーポーズを取ってもらい、5分間の面接に臨んでもらいます。
その面接では、面接官役の人は極めて無反応でいうように努め、ストレスを与えます。
その面接の模様を録画し、評定者に見せて採用者を決めてもらいます。
その結果、評定者はすべて面接の前にハイパワーポーズをとった人を選びました。
誰がどのポーズを取ったのかも知らないのにもかかわらずです。
人の評価は、その人の態度が大きく影響することが分かりました。
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なりたい自分のフリをしろ
カディ教授は、できるようになるまでできるふりをしなさいと言います。身体が心に、心が行動に、行動が結果に影響を及ぼすのです。
常日頃の振る舞いに気を付けているだけで、他人に自分がどう見られているかだけではなく、自分自身がどういう人間であるかということを変えることができるのです。
さあ、しっかりとした自分を持ちたいのであれば、胸を張って過ごしましょう。