私たちは、コンピューターのように世界の情報を事細かに捉えるのではなく、生活に必要な情報を経験などの手掛かりに基づいて抜き出しています。
これはいったいどういうことなのでしょうか。
あなたの視力がどのくらいかは存じませんが、少なくとも我々は見る目がないということを"見せて"くれるのは神経科学者のボー・ロット氏です。
私たちが色をみる時に、実際の色と周りの色、光の色をすべて統合して知覚しているということを紹介しています。
色あてゲーム

オレンジ、グリーン、グレーの3色のうちのどれかが、左右のボードで同じ色だというのです。
その3色から2つのボードで同じ色の物を当ててみましょう。
あれ?オレンジもグリーンも右と左で同じに見えませんか?
そして、グレーだけ色の濃さが違って見えます。
簡単ですよね、正解はオレンジとグリーンに決まってますよ。
答え合わせをしてみましょう。
正解はこれだ!

オレンジ、グリーン、グレー。
あれ?色が変わった?
なんと、左右のパネルで同じ色だったのはグレーなのです。
情報や状況に影響される
これは、ロット氏がパネルを移動させたときに色が変わったわけではありません。3色とも変わらず同じままです。
違うのは背景の黒と白の色です。
私たちの物の捉え方は、このように周辺の情報をひっくるめて知覚しています。
どうしてこのような現象が起こるのでしょうか。
"物の色"と"見える色"は違う
私たちは目を通して視覚情報を得ています。目がキャッチするものは光ですが、光は状況に影響されます。
物の色だけではなく、太陽やライトといった光源の色、空間の色などがすべて統合されているのです。
その要素の一つでも変わってしまえば、目に入る光の色も変わります。
そのことを感じることができる実験はこちらです。
同じに見えるのに実際は別物

この図形が下の図の中に隠れていることが分かります。
目に入ってくる見かけの形も大きさも色もすべて同じです。
しかし、左右の図形は全く違う光源から来ているとロット氏は言います。
左の図形
左の図形そのものの色はオレンジです。そのオレンジ色の物体に右から光が当たっています。
そして、その物体と私たちの間に青透明な物体があります。
右の図形
右の図形は黄色です。ちょうど光に対して陰になっている部分で、それと私たちの間にはピンク透明の物体があります。
違う情報なのに同じに見える
このように、上図では物体の色が違うにも関わらず光と媒体の状況の影響で同じ見かけの色として知覚しています。網膜に届くときには同じ見かけになっているのです。
目に入ってくる情報は感覚的なものであることが分かります。
見ることを学んでいる
私たちが見る物には意味などないのです。私たちは、見る物にパターンや関係性を見つけて、自分の行動の意味や重要性に結び付けて認識しています。
過去の経験を手掛かりとして知覚しているのです。
より単純な色の知覚であれば、私たちの脳はもっと早いスピード処理してしまいます。
視覚はタイムスリップする

まず、上半分のオレンジとグリーンの間にある白い点を30秒間見つめてください。
そして、下の砂漠にある白い点に視線を移してください。
何が起こりましたか?
もともと同じ画像を反転させただけの砂漠の色が、左右で異なって見えると思います。
直前に見た色の情報を引きずって、認識しているのです。
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まとめ
私たちの見るものは、絶対的ではなく相対的なものだということは驚きです。今回のプレゼンテーションでは、これまでに紹介したもののほかに3つほど面白い現象を体験することができます。
動く向きが瞬きするごとに変化して見えるコマや、陰のマジックは必見です。