今回のスピーカー、アポロ・ロビンス。
ステージの上でそれも大衆の面前で堂々と盗みを行い、私たちの注意がいかにあてにならないものか警鐘します。
私がスリや詐欺の被害になんか絶対に遭わないとお思いのあなた、アポロ・ロビンスの術中にはまること間違いなし。
このスピーチ、何度も見返してしまうはず!
“世界最高のスリ”アポロ・ロビンス
彼の肩書はいっぱいある。スリ・アーティスト、欺瞞のスペシャリスト、スリの紳士……。
かつてカーター大統領の護衛官を見事欺いたパフォーマンスで注目を集めたロビンス氏。
彼の20年間にわたる研究と訓練によって培われたテクニックは必見!
目に見えるものほど見えなくなりがち
私たちは様々な感覚器官をもっている。
視覚の目、嗅覚の鼻、聴覚の耳、味覚の舌、触覚の皮膚。
そしてそれらはとても優秀なように思える。
私たちは、一度にたくさんの情報を処理して、おおよその状況を把握する能力に長けている。
しかし、細かいことについては意外と把握できていないことが多い。
たとえそれがあなた自身のことであっても。
注意
ロビンス氏は、私たちの認知がとてもあいまいであるという。例えばロビンス氏は聴衆に携帯電話があるかどうか確認するように促した。
「もしかしたら私が盗んだかもしれない」
そしてその直後、こう続けました。
「それでは、スマホの画面を見ずに画面の右下にあるアイコンを思い出せますか?」
「では目をつむって、私の服装を思い出せますか?シャツの色、ネクタイの色は?」
目を開けて確認し、静まる聴衆たち。
普段目にしているようなものも、その細部に注意してみていなければ分からない。
それは見ていないのと同じなのである。
カクテルパーティー効果:注意することではじめて知る
ロビンス氏は、私たちのもつセンサーはとても多くの情報をキャッチできるという。しかし、監視カメラをモニターでチェックする人のように、“何を見るか”という選択があって初めて注意が向くという。
無意識に注意が向いてしまう例として、カクテルパーティー効果がある。
大勢の人がしゃべっている空間。
学校やオフィスの食堂などで、自分の名前が聞こえるとその会話だけよく聞こえてくるというもの。
反対に、ほかの会話は一切シャットダウンされている。
踊らされるターゲット

ロビンス氏は実際に、聴衆の一人にステージに登壇してもらい、
スリの実演を行った。
コインや音のなるおもちゃを用いながら、あれよあれよという間に時計を奪ってしまう。
実演を見ていると、ロビンス氏がターゲットや私たちの注意を一点に集めるように操作していることが分かる。
ロビンス氏はターゲットの視線を右から左、上から下というように点々とさせ、
肩にコインを乗っけて落とさないようにさせることで神経をそこに集中させている。
大どんでん返し:私たちもアポロ・ロビンス氏の術中に
パフォーマンスのクライマックスになると、このわずか8分の時間は、とても巧妙に計画されていることが分かる。
いや、実際に聴衆が分かるのは再びパフォーマンスを見返した時かもしれない。
アポロ・ロビンス氏の実演は一見、一人のターゲットを手玉にするトリックかと思いきや、
観る人すべてにかけられた壮大な仕掛けであった。
あなたもきっと、このパフォーマンスを何度も見返してしまうはず。