私たち日本人は、欧米や他国の人々と比べて感情を表に出さないと言われています。
外国の人から見た私たちはまるで能面のようだという表現があるほどです。
私たち人間が他者の感情を推測するための手掛かりは7%が言語情報、38%が声調などの聴覚情報で、なんと視覚情報は55%を占めます。
それだけ、私たちは相手の表情を見て感情を読み取ろうとしているのです。
しかし、感情が顔に出ることがなんだか恥ずかしくって、無表情でいる人は多いと思います。
浮かれていること、怒っていること、悲しいことが相手に悟られないようにしたい。
そうやって、感情を隠していられるのも今のうちかもしれません。
感情の表出を研究しているポピー・クラムは、そんなポーカーフェイスは通用しなくなるといいます。
最新技術が私たちの肉体の微妙な変化を読み取って、感情の変化をいとも簡単に検出できるからです。
生物学的な変化が感情を捉える
クラム氏は、状況の変化と身体の生理的システムの変化の関連を捉えることで、感情は測ることができるという。高音に反応するクモ
状況の変化に身体がシステム的に反応することの例として、クラム氏はクモの話を取り上げました。ある種類のクモは、クモの巣を調弦するのだといいます。
まるで、ヴァイオリンのようにです。
そうすることが、クモにとってどういうメリットを生むのでしょう?
そのクモは、鳥の鳴き声やコウモリの超音波に共鳴するように糸を張ることで、捕食者の襲来を察知することができるのです。
試しに、クラム氏がクモの近くで声を出しました。
低音、中音、高音というように3種類の声をです。
すると、高音の時だけクモが威嚇行動をとりました。
鳥の鳴き声に近いからです。
クラム氏は捕食者ではありませんが、生物学的に制御された反応にクモが生体反応を示しました。
私たち人間は、自分の内側の感情が他者に悟られないようにコントロールできると考えがちです。
しかし、このようなクモと違うと言い切れるでしょうか?
瞳孔は収縮する
クラム氏はクモに続けて、人の瞳孔の変化のお話をしました。ある一文を、一人の声が読み上げた場合と、二人で同時に読み上げた場合についてその変化を検証しました。
すると、二人で読み上げた時だけ瞳孔が拡大したのです!
氏によれば、脳が情報を読み取ろうと頑張るとき、自律神経系が作用して瞳孔が拡張し、そうでないときは縮小します。
二人の声という情報量の多さが、この変化を生み出したのです。
つまり、瞳孔の変化を見れば脳の働きがわかるということです。
肉体の変化から、感情や脳機能の働きを分析することは可能なのです。
では、どういった方法で私たちの感情を分析できるのでしょうか?
身体は正直
体温変化 サーモグラフィー
サーモグラフィーが私たちの感情を明らかにします。私たちは、火の写真を見ただけで身体が熱くなったそうです。
体温変化からは、ストレスの状態や集中の度合い、会話への没入度、恋愛感情が分かります。
緊張や興奮をすると体温がわずかながら上昇するためです。
言葉の統計的な変化 マイク
体温変化だけではありません。私たちの健康状態は声や話し言葉に現れます。
マイクで音声情報を大量に集めてその変化を機械学習させることで、精神病の罹患予測などが可能であると明らかになっています。
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声からは、これまでに考えられていたよりも多くの情報が読み取れるのです。
呼気の変化
なんと、私たちの吐く息からは”昨夜のおかずが餃子だった”ということよりもさらにスケールの大きいことが分かります。私たちの吐く息に含まれるアセトンとイソプレンという二酸化炭素の混合物があります。この組成が感情に合わせて変化するというのです。
不安や恐怖を感じると、吐く息に含まれるこれらの化合物の濃度が高まります。
感情を読み取るテクノロジーが私たちにもたらすもの
クラム氏は、これらの技術によって共感能力を獲得することを私たちが受け入れさえすれば、たくさんの人々の役に立つといいます。テクノロジーが人々の感情の橋渡しをして、私たちが相手の感情を把握することができれば、私たちは社会的にもっと繋がりを持てるかもしれません。
学校のカウンセラーが、とても活発な生徒が不安や悩みを抱えていることが分かれば、サポートがしやすくなります。
攻撃性高まった人を事前に察知できれば、暴挙に出る前に事件を未然に防ぐこともできるのです。
クラム氏はプライバシー保全を憂慮してスピーチを終えています。
あなたは、いつもそばにいる大切な人たちの気持ちを分かっていると言えますか?