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幸福を作ろう!心理的免疫システムとは【TED】ダン・ギルバート

心理的免疫システム:私たちが幸せを感じる理由【TED】ダン・ギルバート
心理的免疫システム:私たちが幸せを感じる理由【TED】
幸せとは見つけるものではない。

幸せとは作るものだ。
「明日の幸せを科学する」(Stumbling on Happiness)を書いたハーバード大学心理学教授のダン・ギルバート。

夢や希望が叶ったときの幸福と、希望が叶わずに自分たちで作り出した幸福は全く同じであるという。

私たちが幸せを感じることができる秘訣は、心理的免疫システムにある。
心理的免疫システムとは?

簡単に説明すると(目次)

疑似体験テスト、どっちの未来が幸福?

突然だが、あなたはどちらの未来を好ましいと思うだろうか。

一つ目は、年末ジャンボに大当たりして億万長者になる未来。

二つ目は、下半身マヒになって自由を奪われてしまう未来。

そんなの、大金持ちになるほうがいいに決まってるよね?

幸福度の実際

億万長者の未来だと思ったあなた、残念!

驚くことにどちらの未来も同じく幸せなんだ!

ギルバート博士は、実際に宝くじ当選者と下半身マヒの患者それぞれに調査を行った。
すると、宝くじを当選して1年後の人と、下半身マヒになって1年後の患者は、
同じ程度の幸福を感じていることが分かった!

疑似体験の罠

私たちは、二つの選択肢を問われたとき、それぞれの未来について想像したはずだ。

私たちは体験していないことも想像できる力をもっていて、ギルバート博士はこれを疑似体験と呼んでる。

ギルバート博士は、私たちは疑似体験の結果を実際の体験以上に大きく評価する傾向にあるという。

私たちは結果を気にしていない

ギルバート博士が研究で明らかにしたところによれば、私たちの感情は私たちが考えているほど現実の状況に影響されていない。

例えば、プロジェクトを成功させようが失敗してしまおうが、

希望の大学に合格しようが第二志望に入学しようが、

スムーズに目的地にたどり着こうが渋滞にはまろうが、

私たちが想像しているほど、私たちは衝撃を受けていないし感情的にもなっていない。

人生最大のトラウマでさえも、3か月以上の前の出来事であればその人の幸福には全く影響をしていないという。

なぜなら、幸せは作り出すことができるからだ。

心理的免疫システム 世界の見え方をポジティブに変えている

私たちは、幸せは見つけるものだと考えていて、自然発生した幸せこそ価値があるのだと思い込んでいる。

しかし、私たちは幸せを作り出すことができる。
その秘密は認知プロセスにあって、私たちは自分が置かれている世界をよりよく感じられるように世界の見方を無意識的に変えている。

そして、その認知によって作られた人工的幸福は自然発生的幸福と同じ価値なのだ。

心理的免疫システムの実験-私たちは幸せを作っている

人工的幸福の一般例について、ギルバート博士はある実験を紹介している。

実験参加者に6つのモネの絵を順位付けしてもらった。
一番いいものから一番気に入らないものまで。

そのあと、実験者が選んだ3番目と4番目の絵のどちらかをお礼にあげると伝える。

6つの選択肢の中で、3番目と4番目に好んだものどちらかを選ぶ。

どちらもほかの絵と比べてそこまで好きでないというどっちずかずな状況である。

やはり参加者は3番目のものを選ぶ傾向があった。

それから時間をおいたあと、再び絵について訊ねた。

すると、参加者たちは自分がもらうことを選んだ絵を非常に好んだ。
この結果は、前向性健忘症の(新しい記憶ができない)患者においても同じだった。

人は、自分が選んだものを一番いいと感じるのだ。

この幸福を作り出す心理的免疫システムは、私たちの誰もが備えている。

しかし、私は幸せだと思う人は意外と少ない。

それはどうしてだろう。

選択肢という自由は人工的幸福の敵

選択肢が多いということは自由であって、幸せなことなのだと思いがちだ。

お金持ちに魅力を感じるのは、お金によってできることが増えるからだ。

帳簿とにらみっこせずにすむことはなんてストレスフリーなのだと思う。

しかし、選択肢の多さこそが幸せを奪っているという研究結果がある。



選択肢の有無

ハーバード大学の学生に大学の思い出として12枚の写真を撮ってもらい、2枚を選ばせる。

そして、そのうち1枚は手放さないといけないと告げる。

一つ目のグループの学生は、あと4日間なら何回でも残す写真を取り換えることができる。

二つ目のグループの学生には、学生が手ばなすことを決めた写真は取り換えできない。

ギルバート博士は以降3~6日間の写真への好感度、満足度を測った。

すると、交換ができない学生は自身の写真への満足度が高かった。

対して、交換可能な学生は交換可能な期間が終わっても写真を好きにならなかった。

選択肢の多さは、人工的幸福との相性が悪い。
自分が選ばなかった選択肢を疑似体験して過大に評価し続けてしまうからである。

自由なものと制限されたもの

ギルバート博士は、先ほどの実験の2つの状況をほかの学生に選ばせた。
写真を撮るとしたら、交換可能なほうがいいかどうか訊ねたのである。
すると、66%の学生が交換可能な状況の方がいいと選んだ、
なんと3分の2の学生が、写真に不満を抱きやすい状況を選んでいた。

ミニマリストは幸せ?

ギルバート博士が一番伝えたかったこと。
それは、私たちの欲望や憂慮は自分たちで作り出していて、選択したあとも”他の何かを探し求めて欲している”ということだ。
確かに私たちは一つの未来を選び抜くということは必要だ。
しかし、選ばなかった未来を疑似体験して過大に評価してしまっている。
そのため、いつまでも満たされないというジレンマが生じている。
近年、ミニマリストという存在が注目されている。
自分自身が選んだものこそがよいのだ、と感じることが大切なのかもしれない。

体験していないことを想像して検討できる-疑似体験について

運転免許を取るときに、シミュレーター (模擬運転装置) を使って訓練をする。

梅干しを思い浮かべた時、その酸っぱさを想像することができる。
そして、梅干しを誰も牛乳に入れようとはしない。
なぜなら、想像すると不味いと言えるからだ。

このような疑似体験をすることができるのは、人間だけだという。
それには進化の過程に秘密があった。

疑似体験は前頭葉皮質に秘密がある

私たち人間が疑似体験をしているのは、前頭葉皮質に秘密があるという。
前頭葉とは、その名の通り脳の額側にある器質である。

私たち人間の脳は200万年の間に重さにして700gから1400g、容積にして3倍に進化した。
新しい構造、前頭葉を獲得したからである。

私たちはこの前頭葉を使って、未来の予測や判断をしている。
とても役に立つ機能だが、疑似体験は実際の結果よりも過大に評価してしまう。
そのため、私たちは選ばなかった選択肢のせいで不満足な状態でいるのだ。

あなたにとって、幸せとは何ですか?